サミュエル・マオズ『レバノン』

2011/02/28by GX750

 皆さんはお正月、映画は何かご覧になったでしょうか?私は『キック・アス』(最高でした)と『レバノン』を観ました。『キック・アス』は観た方も多いと思うので『レバノン』のことを。ちなみに前々回で『戦場でワルツを』という映画をとりあげましたが、私は中東情勢に詳しいわけでも何でもありません。単なるそこらの若者です。

この映画は1982年のイスラエルによるレバノンの侵攻を描いたものです。一台の戦車の中でせめぎあう《兵士らしからぬ兵士の姿》と《戦車の主砲の照準を通して見る》壮絶な光景がこの映画の肝です。この二つの要素が徹底的なリアリズムを生み出しています。ストーリーの柱になっているのは砲手の動向で、気の弱い彼が大砲を撃たざるを得ない状況、それが戦争というものの姿をあぶり出していきます。これを観ていてふと思いました。「そもそも大砲は砲手が撃っているのか?」

前に実存主義者サルトルのことを書きましたが、その思想に真っ向から対立したのがレヴィ=ストロースらを中心とした構造主義者です。人間は様々な状況や環境によってその存在が決定されている、というのが構造主義の基本的な考え方です。大雑把に言ってしまえば、家族構成とか国とか民族とか使用する言語とか、そういう無数の要素が一人の人間をある程度の枠組み内に入れてしまうということですね。

今回のこの映画で言えば、《砲手がトリガーを引く指》というミクロな世界の中に、国家の思惑、民族の歴史、宗教観などなど、無数のマクロな問題が詰まっているというわけです。兵士の弱気な性格というのはとても象徴的ですね。

えー、何だか尻切れトンボですが、これ以上書くと収拾がつかなくなりそうなのでこの辺で。あとは皆さんご覧になってください。彼の指先に世界が見えます。

 

 

GX750

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